䷨41.山沢損(さんたくそん)
「未来への贈り物」
この卦が表すもの
上の卦が「山」で、その下に「沢」があります。沢によって下へと力が働き、渓流が深くなり、さらに低いところを流れていくことで、山の高さがより一層際立っていきます。
この卦での「損」は、文字どおり損すること・減らすことを意味しています。何のための損かというと、次のステップアップのためです。この損は、これからの先行きに投資するためのものと考えてください。わかりやすい例では、資格を取るために学費を支払って学ぶことなどです。一時の出費は「損」だととらえがちですが、この卦での損は後で必ず帰ってくる損です。損の内容によって、そのあとに訪れる「山」の大きさも異なってきます。
この卦が私たちに教えること
「損して得をとれ」という表現がありますが、この卦での損は、単なる損得勘定の話で終わるものではありません。本当の意味での損は、まことの心のある損で、易経では「孚(ふ)のある損」と表現します。孚のある損は、損すべき時に損得勘定を捨てたうえで行うもので、そのあとからやってくる利益は永続的なものになると教えています。
先に自分の資格取得のために出費する例を挙げましたが、永続的な利益につながる損とは、個人の範囲にとどまらず、もっと公益的な意味合いの強いものになります。
この卦が出たあなたへ
この卦が出たときは、出費は免れません。仏教の「喜捨」のように、喜んで捨てて自分も満足し、相手も喜ばせることです。事業では、一時的に手元の資金を使って外部へ投資をし、将来はその分野から利益を上げていくことになります。
男女の間でいうと、性的なつながりそのものが山沢損といえます。男性が愛情のために、自分の生命力を減損して女性に与えます。女性は喜びとともにそれを受け、男性も同時に喜悦を味わいます。
結婚には大変よい卦です。とりわけ、男性が女性側の家族と一緒に住むには大吉です。
占い例
ある方の、相続で取得した不動産について占ってこの卦が出たことがあります。その不動産はご実家が商売をなさっていたところの土地・建物で、当時は誰も住んでおらず、活用できていない上に、固定資産税等の諸経費がかかり、他の財産を取得した兄弟を羨ましがっていました。当時、これは亡くなった方からの「愛のこもった贈り物」と受け取り、税金も喜んで支払うとよいと伝えましたが、不本意な表情でした。
数年後連絡をいただき、その方がご自分で事業を始めることになったときに、不思議な縁でその不動産を売ってほしいという人が現れ、まとまった資金を手にすることができたとのことでした。