䷴53.風山漸(ふうざんぜん)
「旅立つ渡り鳥」
この卦が表すもの
「山」の卦の上に「風」があります。風は、ものの形でいうと「草木」でもあるので、山の上に生育する植物・樹木ととらえます。
「漸」は、「ようやく」と読むことができ、漸進・漸次等の熟語があるように、その意味は「ゆっくり進む」ということです。
高山植物や山で成長する樹木は、一日の気温差が大きい・強風・土壌が貧弱・紫外線が強い等、平地で育つ草木と異なり、厳しい環境に耐えていかなくてはなりません。そのため、他と比べると成長の度合いや順応する時間がかかることが多いかもしれませんが、たとえゆっくりであっても、着実に成長する素晴らしさが表されています。
この卦が私たちに教えること
風山漸の原文をあたると、女性が結婚するときを挙げ、段階・順序を正しく踏んで進めれば、その先で必ず幸福をつかめるといいます。自分から先を急ぐのではなく、環境や状況を見極めて、休まずにゆっくりと進んでいけば吉であると説いています。
嫁いでいく女性が、故郷を離れることは、渡り鳥が他の地へと飛び立つ様子にも重なります。渡り鳥は少しずつ高いところに移動し、最終的には空の彼方へと飛んでいくのですが、順を踏み整然と列をなして飛んでいく美しさを賛美しています。
女性に限らず、この卦は私たちに功を焦るなと教えています。成功や出世を求める心が先走ると、必ず躓く危険がつきまといます。むしろ先を競わず、遅れ気味でも、前にならって着実に歩みを進めていると、いつの間にか大成につながることがあるのです。
国や組織のリーダーも、全体を良い方向へ導くために、ゆったりと落ち着いた運営を行い、自らがよい姿勢を示すことでその雰囲気は風となって組織全体にいきわたります。
この卦が出たあなたへ
結婚の段階にきている方でしたら、これは良縁です。
恋愛中の方は、今とても楽しい時を過ごしているときと思われます。いつまでもそのままにせず、結婚に進めることができれば、幸福な家庭を築くことができます。その際に注意することは、先を急がず、手順に沿って着実に進めることです。
すでに結婚している方にこの卦が出るときは、情事が起きやすいときです。配偶者や近親の大切な誰かに悲しい思いをさせた上での幸福は存在しないということを肝に銘じて、責任を持った行いをしてください。