火風鼎(かふうてい)~聞く耳を持つリーダー~

50.火風鼎(かふうてい)

「聞く耳を持つリーダー」

この卦が表すもの

「風」の卦の上に「火」があります。風はものの形でいうと(小さな)木を表すので、木切れを火にくべている情景が浮かびます。

「鼎(かなえ)」とは古代中国において、祭祀の供え物を煮炊きするための青銅製の大鍋のことで、国の一番の宝器であると同時に、君主の権威の象徴でもありました。祭祀の儀式の際、小枝を火にくべ、鼎を用いて供え物の鳥獣を煮炊きして、天に捧げた様子を表しています。

「鼎の軽重を問う」という故事があります。これは、春秋時代の中国で、新興勢力の楚の荘王が、国力の衰えた周に揺さぶりをかけ、「周の鼎の大きさと重さはどのくらいのものか」と、周王朝の宝器の大小や軽重を問うたことから、トップの実力を疑い、その地位を奪おうとすることを表す表現になりました。

この卦が私たちに教えること

鼎には、薪をくべて火を焚くために「足」がついています。その上には料理を入れる胴体の部分と、熱くなった鼎を担いで運ぶために、つるをとおす「耳」がついています。この卦では特にこの耳の部分に着目して、国や組織のトップに立つものは他者の有益な意見に耳を傾けることが重要だと教えています。

古代中国で祭祀の際には、近隣諸国からの賢人も招かれており、儀式の後には今でいう「シンポジウム」が開かれていました。情報の宝庫である賢人たちと語ることは、外部の意見を聞く重要な機会であり、学びの場であったといいます。

易経では君主やリーダーは、特に「聞く耳」を持つことが重要であると何度も説いています。賢人の意見や知恵も、謙虚な姿勢がないと生きた情報をたくさん集めることができません。そして次に、それらの情報を自国に活かすにはどのようにすればよいのか、情報を自国の鼎で煮炊きするように、自国にあった対応を考えていくことが大切です。ここがリーダーの真価を問われる重要局面です。「耳目聡明」という言葉はこの卦が出典です。火風鼎におけるリーダーは、トップに立つものの責任の重さを十分に分かっているからこそ、他の意見も謙虚に聞く用意があるのです。

この卦が出たあなたへ

鼎が、三本の足のある鍋であるところから、一人ではできないような大きな仕事も三人(=複数)なら、大きな成功をおさめることができます。現在はすべてのことが整っていて、安定感・充実感のある状態です。

仕事や事業においては、気の合った仲間ができて、調和のとれたチームを組んだり、地盤・財力・知力の三拍子がそろった安定の状態になる時です。

結婚にはよい卦です。ただ、この卦が三人で構成するものなので、気の付くお姑さんがいて世話を焼いてくださったりするでしょう。

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